fc2ブログ

  日々、ミカンのこと                 

nalu

O のこと 

未分類 |

20220902122633383.jpg


 
九月
昼間は暑いが、朝晩には涼やかな風が吹く
ほったらかしの畑にこわごわ行ってみると
草の中にササゲがぶらぶらと実って
無精なわたしを健気に
待っていてくれた

しゃがんでしみじみ
このササゲたちに
礼を言いながら摘めば
スカートの上いっぱいの
思いがけずの収穫
麦わら帽子に入れて帰る

帰り道
桜の木陰でひと休みする
畑の主、キミさんに会って立ち話をする
この夏の畑、無精を詫びるとキミさんは
暑いから無理はせられん
と、やはりおおらかに云う

キミさんは朝起きたらまずは畑に行くのだそうだ
毎朝、春も夏も秋も冬も
キミさんの畑は花々あいらしく、
野菜もぷりぷりしている
オクラの花がレモン色に
うつくしく咲いていた


さて
前置き長くなってしまったが
現在、大変有難いことに
CD 「O」をお取り扱い頂いている方々です。
(以下、五十音順)


ao+水玉 (アオトミズタマ)
青森県 弘前市に在る、愛らしくうつくしいものをセレクトするお店さん。
the yetisの頃からお世話になっています。
aotomizutama.theshop.jp


kai's shop
鎌倉で、流れ星のように不定期に営まれる小さなお店。
大切な友人でもあるkai氏は、「O」"peace"の作詞作曲を手掛けてくれています。
https://k-a-i.info


KURAKURA storehouse
横須賀市 秋谷に佇む古民家ギャラリー。
白倉祥充さん、えみさんがいのちを吹き込んだ木工、陶芸作品に出会えます。
葉山時代、たびたびここで唄わせていただきました。
http://kurakurastore.jugem.jp


珈琲商店ハト
千葉県市川市に在る、駅から程近い珈琲屋さん。
心美しい店主の淹れる珈琲の香り、美味しい焼き菓子にほっとします。
こちらも有難き、the yetisの頃からのご縁です。
https://coffeehato.com/


コナカフェ
高知県 須崎市に在る、自家製パンとお菓子のお店。
センス佳く美味しい、貴重な処。
今の地に暮らしはじめてからの、嬉しく尊きご縁です。
https://instagram.com/cona_cafe?igshid=YmMyMTA2M2Y=



HIMMEL
セラピスト、アーティスト SHIDHE氏の、鎌倉山に在る、異世界のように美しいアトリエ。
葉山時代からの深いご縁。
たびたび、こちらでライブもさせていただいています。
http://www.himmel-schule.com/



あらためて、
なんとゆたかなご縁にわたしゃあ
恵まれて生きているのであろうかと
おもう

有難き
ありがたきことかな。









12:29 |  trackback: -- | comment: -- | edit

海の家 

未分類 |



20220727154508e02.jpg





七月のある日
生活の拠点を二階の部屋へ移した

とはいってもただ単に
我が家唯一のテーブルを二階へ運んだまでのこと
なのであるが、
それだけであらゆること
その営みの景色が変わってくる

二階の部屋からは
海が見える

ヨネさんちの
白銀色に照り光る屋根瓦越しに
まっすぐな今日の水平線がみえる

朝ごはんも昼ごはんも夕食もここで食べる
これまで台所内の
調理台から振り返ってそのままテーブルに
という便利さとは打って変わり
わざわざ二階へ食事をはこぶ
お盆一杯にのせても足らない時は
念じてみたとて
手がにょきにょき生えてきてはくれぬので
もう一度階段を下りて、上って
食事を運ぶ

むすこは当初
なんで二階でたべるが?
と、問うていたがじき慣れて
先発で二階へ上がり、
テーブルを拭き
箸と箸置きを並べてかえってくる
ので助かる

これまでこの家に住み暮らしていて何故
こうしなかったか
くらいこれがいい

この家に一目惚れしてここへ住まわせてもらっている
その醍醐味というものだ

しみじみ
ここで
茶を呑み
日記など書き
また
本や手紙など読み
深くこのさいわいを噛みしめる

ああ

つい数週間前までここでは
洗濯物を干し
朝の動作、祝詞をおこない
あとはお客さまが泊まるときにつかってもらうだけであった

おおそういえば
数ヶ月に一度、訪ねてくれる
月の海  canaちゃんに、ここ
海の見渡せる部屋で
髪を切っていただいている
今年の初めからのことだ
以来、髪はばっさりと短い
これも
私の本質に合っているような気がする

と、おもえば
テーブルの端にこどものカマキリが居る
揺れながら
あるいている
淡い黄緑色
お昼を知らせる
けたたましいサイレンの音がする

数日前よりむすこが
二階で寝たいと言い出した

どれどれと
布団を敷き
寝転んでみると
星がみえる

窓の外
暗闇に満天の星
ひかるがみえる

流れ星みえちゃうかもね
どうする?
なんて言いながらいつのまにか眠っている

朝が来て
太陽のひかり差し
波の音がする

カマキリはどこかへ居なくなった

そろそろ
お昼餉にするとする


いきていること
それは
くりかえす波のように

死者たちも同時にまた
うつくしく
いとおしく
ここに
ある




12:18 |  trackback: -- | comment: -- | edit

謝謝、福井だいこん舎 

未分類 |

20220614131759b5e.jpg



五月二十日
福井県越前町、
だいこん舎 洗心亭に於いて
午前と午後
ふたつの環、かこむ。

ここに至るまで
だいこん舎さんへの了解から
お集まりになってくださる方々へのお声がけ
すべてを取り仕切ってくれたのは
昨年、ここで展示会をひらきご縁を繋いでくだすった
“ひら” の衣のひと、ひろこちゃん

彼女の身体のなかには
うつくしい
初々しく
ひかるいのち


畳の間
円座すると
鳥の囀り
葉擦れ、風の音

その間
むすこは伸びた筍を手折り、肩に担いでは
ちいさな女の子と芝生を走り回っている
それを見守ってくれたのは
ひろこちゃんのお母様

こえ
ふるえは
さざなみとなり
波紋となって
わたし
せかいにひろがる

ことばは
なみとなり
はるかとおく
いつかのわたしを
ゆりおこす

畳の間
昼も夜もそれぞれに
集うたいのち
声は身体をぬけだして
交じり合い
重なり合って
あらゆるものと
ひとつになる

この土地、
また遠くから
この一寸のとき共有すべく
足を運んでくだすった
おひとりおひとりに
こころより、感謝申し上げます

おひとり欠けても
おなじようにはならなかった

昼また夜、それぞれに
素晴らしい、ありがたいときでした。

だいこん舎のお蕎麦、
やはり最高でこのたびも
二日連続お昼に頂く。

甘味のそばがきの黒蜜がけ、
翌日は
山菜のかき揚げに至るまで
くるみだれ、
おろしとろろの
お蕎麦とともに唸るほど、
実に実に、美味でありました。


昼夜の会の合間には
弘子ちゃん、お母様ともに
そのご友人・野さんの携わる陶芸館へ
ご案内いただく

そこで息子ともに
土を捏ねさせてもらい
息子は野さんと軽快にお喋りしながら
手を動かし、
小さなお団子から葉っぱのお皿、
さいごには山積みのパンケーキまで
愉しそうにこしらえる

昔から図工とか、目に見えるものを
とくに人前で形作ってゆくのが不得手なわたしも
なんとか
小皿と平べったいランプシェードをこしらえる

これをわざわざ焼いて仕上げて
送って下すったものが
今日届いた

鉛筆文字のお手紙を
拝読しながら
胸一杯で視界が滲む

こんな
温かくも素晴らしい出会いと
ご縁と、ご厚意に恵まれて
感無量

感無量
とは
わたしの大好きな祖父からの手紙で覚えた
ことばであったが
この歳になり
その意味をわたしなりに
心身でこの頃、深く感ずるようになった

おじいちゃんには
毎朝挨拶を交わすが
観ていてくれているだろうか
いや
観てくれている
祖母、インコとともに

話が逸れたが
福井
このたびもほんとうに
佳きとき
しあわせなときであった

帰りの日、朝に息子と
だいこん舎さんおすすめ
花みずき温泉の湯に浸かり
しみじみ
この身のさいわいをおもう

ひろこちゃん、
そのお母様、
そして
だいこん舎、
かずさんとゆかりさん、ちらっと会えたのりかちゃん、
猫のふじこちゃん、
野さん、
昼夜うたの輪かこんでくだすった
おひとりおひとり、
ほんとうにありがとうございました。

また訪ねたいと
願うております


謝謝


13:20 |  trackback: -- | comment: -- | edit

謝謝、ひふみゆ 

未分類 |

202206091112007e0.jpg

六月十六日 
望月の日
長野県佐久 
望月町森の小屋にて
唄、声、なみだ、
あふるる音の環
かこむ

この日
森の杜のなか
これまで
いつのまにか築いてたパターンのようなもの
その一切がなく
なにかもう
隠すことも繕うこともできぬ
ただ
丸裸のわたしが居り
そのわたしのなか
流れてゆくまま
やってくるままを
この日
あちらこちらから集うてくだすった
かみさまのようなひとたち
に、くるうりかこまれて
みれば
森の道のむこうに
むすめと、ちいさなむすこ


かぜがふき
とり
けもの
鳴き交わし
木々草草ゆれざわめき
ひとともり
ひととけものたち
ひととせかい
その境界を解き
淡くまじりあって
ここにいる
その
自覚意識あるなしに問わず
ゆるやかに
たすけあって
居る

わたしは何故か
赤子のようになって
そのむきだしを
あたたかないのち
そのけはいで
やはらかくみまもり
くるんでいただいた

それは
なにかのおわりと
なにかのあらたなる
はじまりであったのかもしれない

慈悲深き
おひとり
おひとりに
ふかく
感謝するばかりである

あたたかな小屋のなかで
まるい
おむすびをいただく

ほおばると
知ったことのない
なにかがひろがるのでおどろく
ひとくち
ひとくち
その後も
あせることなく
それはひかる
ひかって
からだ
わたしのなかへ
ちらばってゆく

まこちゃん
このおむすびをむすんだひと
に、はじめて
出会う

このあと
まるい輪の中で
おひとりおひとりの
ことばで話してくれたこと
それは
この日
話すことさえままならない
わたしの
御守りのように
ふかく
瑞々しく
浸透していって
いまも在る


ひふみゆ
https://hifumiyu.com/


かずみちゃん
まさみくん
そして
ふう
とわ

おふたりには
ことばではたりない

五日間の滞在から
うけとったこと
いただいたこと
すべてをふくめ
全身全霊、感謝申し上げる


おふたりの手による施術も
またほんとうに
ほんとうに素晴らしかった

いまうまれ
あたらしく
天井と
己の手のひらをみる

期間限定、森の小屋での施術もまた
さぞや特別なものであろうと想う


みず
やま
もり
つち
かぜ
しか

ほし
つき
あめ

なにもかも
なにもかもに
謝謝


20220609111215adc.jpg



20220609111222c02.jpg



(写真はすべて、「ひふみゆ」のうつくしいHPを手掛けた須賀さん撮影。)








11:48 |  trackback: -- | comment: -- | edit

circle for a feeling voice  止心庵 

未分類 |


2022052122091254a.jpg




四月
心に沁み渡る佳きひとときを
与えてくだすった
止心庵

こちらで
これからめぐりゆく季節とともに
こえを
おとのなみを響かせる輪を
ひらくこととなりました

これは
わたしが
ここへきて
待ち望んでいた
夢のような
こと

ここに
住み暮らすようになってぐるり、ぐるり
三年目
敬愛するこの場所、この方々にくるまれる
このご縁の有難きに
心から感謝して

ご一緒できますれば
このうえなき
さいわいです

…………


circle for a feeling voice
母音と倍音、声音のワーク

2022.6.3 (fri)
13:30~15:30

1500yen + お茶とお菓子(donation)

於 止心庵

高知県四万十市口鴨川136
https://www.facebook.com/shishinanshimanto

○ご予約
070-4413-7126
levelamica@gmail.com
いずれかに、以下をお知らせください。
・お名前
・人数



環となり
境界線を解いて
耳をすます

技術、優越もなく
ただ声、母音を
ゆるやかに
響かせてゆく

そこに
自ずと立ち現れてくる
"わたし"
は、素であり自然

それは
すべてとひとつである

わたし、いまここ、その原初に還る。


身一つでおこなう
母音、倍音を用いる
"声のヨガ" のようなワークです。

人前で声を出すのがためらわれる方
久しぶりに声を出したい方
どなたでも安心しておこなえるよう
ゆるやかに誘導してゆく環、場となります。

………


初夏へと動きゆく
美しい庭、
揺れる山の緑と気配、
とり、けものたちのこえ
窓から見渡す
止心庵
畳の間にて

心よりお待ちしております

22:41 |  trackback: -- | comment: -- | edit

O 

未分類 |

202205212120354ed.jpeg



長野から福井めぐり
ふくふく
旅のなか

nalu
はじめましての音源
CDがいよいよ完成
発売となる

音に於いて
木原健児氏
また
ジャケット、言の葉の挿入紙に於いて
灰方るり氏
また
デザイン、アートディレクションに於いて
嶌村美里氏
御三方の偉大なるお力添えと
それぞれ永きにわたり
やはらかく、おおらかにまた最善を尽くし
寄り添ってくださったおかげさまで
我ながら
とても
素晴らしい作品となりました。


空間、日々、余白のなかで
このおと
おとのなみ
お届けできたなら
さいわいです


こちらから
レビューを聴くことができます

https://youtu.be/3TqXeDEIUOE

ご予約は
ホームページのcontactより承ります


今後、よりスムーズにお届けできるような
仕組みも整えて参りますので
こちらもゆっくりお見守りいただけますように。

はるからなつへ
新緑から深緑へ
田圃には水が満ち
空をうつしてひかる

駆け抜けるように
また
どの一寸もこぼさぬようにと
このせかいを
祈り、抱きしめながら
すすみ
ゆく



22:00 |  trackback: -- | comment: -- | edit

謝謝、止心庵 

未分類 |

20220420153627dd6.jpeg


大阪につづき
4月14日木曜日、四万十市
止心庵さんにて。


緑ひかる細い山道を上り
ご挨拶をすると
それはそれは隅々にわたり
美しく、清め整え、しつらえて
お支度してくださっていて
それにもう初めから感激す。

ここに
近くからも遠くからも
集い、この場と時を共有してくだすった方々、
まことにありがとうございました。

ここに住み暮らすようになって
程なくまる二年
その間、またそれに至るまでに
出会い、支えてくれている大切な方々
今のわたしを
勇気づけ、またこうふくたらしめてくれている
大事なご縁、この場、ひとびと、それらのいとおしい気配に
胸いっぱいにして
おりました

健児くんの歌ってくれた
「茶の間」も
素晴らしかった

すべてのこと
また
止心庵、そして美佳さん
お庭の蛙たち、木々花々、鳥たち、
当日お手伝いしてくれたじゅんじゅんさんとゆうきちゃん
ここでも音せかいを、心強くご一緒してくれた木原健児くん、
見守ってくれた木原佐知子ちゃん、
足運んでくだすったおひとりおひとりに

しみじみ深く
感謝して。

この日に朗読したことば
文章のひとつをここに
記しておく

(冒頭の写真は、じゅんじゅんさんが撮ってくだすった)


ーーーーーーーーーー


春分の日
熱が出た

春分の日、といえば
私の大切な友人夫婦の結婚記念日である
だから
というわけではないが

春分の日
わたしはこの日を
毎年 大事におもっていて
大切に過ごす

かつてひとは
春分の日
山にのぼり
日を迎え、日を見送ったのだそうだと
なにかで読んで
そうか
今年はどこか手近な山へでものぼるかと
むすことふたりぶんの弁当をこしらえ
さあ
そろそろ
でかけようかというころ

ふいに
ぞくぞくと寒気がして
おや
熱でもあるのかしらと
体温計を小脇にはさんでみると
まださほど高くはなく
なに微熱くらいである

けれどもこの寒気
一向ひいてゆく気配なく
怪しげにその存在を増してゆく
やや
これは

とおもい
ひとまず何故か二階へゆく
動けなくなる前にと
干していた洗濯物をとりこんで
この寒さをなんとかしのぐため
押入れから掛ふとんを引っ張りだす

それ
がばりとかぶって
畳にまるくなる
ぞくぞくする
とにかく寒い
おそろしいほどに寒いです

階下では山登りを心待ちにしたむすこ
ごきげんに遊び
暫くしずかである

ややして
むすこ鼻歌をうたいながら
階段をのぼってやってくる

あれ?
どこ?
ここなの?
と、むすこ
部屋中央の布団をのぞく

そこにはまるまった母親がいる
怪しげに震えて
言葉にならぬことばを
ぶつぶつとくりかえす
怪しげな母親が居る

どうしたの?
お山いかないの?
お山いこうよ
出発しようよ
おそくなっちゃうよ

けれど母
いやわたし
さむいさむいさむいさむいの
とだけようやく云う
次第に歯が がちがち言い始める
寒いので
ぶるぶるぶるぶる震えだす
寒いので
身体がぐねぐねして身悶える
寒いだけなのかよくわからない
息遣いが常軌逸して荒々しくなる
これはむすこにしか見せられない
身体のなかになにかが駆けまわっているので
これは
なんだ野生のイノシシとかそういう
動物なのか
動物がのりうつっているのか

本気でおもうほど
変な具合に身体が動く
そして
妙な
吠え声みたいなものが
でている
わたしの口から
身体から

そんな
おかしな具合の母をみてむすこ
わらいだす
さも愉快そうに
けらけらわらって足をばたばたする

たのしそうである
そりゃそうだ
おかしいものね

けれどこのたのしそうなようす
わたしには救いである

むすこ
笑いながらいとおもしろそうに
布団へはいってくる

お山いけない?
うん、ちょっと今はいけない
おべんとうは?
うん、今はちょっとたべられない
おなかすいたの?
たべてくる?
ううん、まだへいき
ここにいる

熱が身体をはしる
自分を自分でコントロールができない
勝手にふるえて
勝手に低いうなり声のよう
獣みたいに吠えていて
身体が勝手に動く
おそろしいほどに歯が痛い
それにともなって頭がずきずきする
割れそうだ


ふと
ああわたし
これは
死ぬのかもしれない

朦朧とそうおもう
でもそれは
悪い感じはしない
これといった後悔もないし
わたしは今至極しあわせである

さて
もしかするとあちらへいくのかもしれない
すうっと
そのときが来たのかも知れない
ふふふ
獣のようになりながら朦朧
そんなことをおもう

ただこのむすこ
この顔をこんなふうにして
間近で
匂いをかいでぎゅっとすることも
できないかもしれないのか
そうおもうと

ああよくみておこう

まじまじとむすこをみる

うみ
名前を呼んでみる
うーみ

その声音をきいて次第にむすこ
あれ?
とおもったのらしい

だいじょうぶ?と
いいはじめる
そうして
うみくんなおしちゃうけんね
といって
なでなでして
ぽんっ
となにか元気玉のようなものをくれたりする

そうやって暫くの後
わたしは気絶するように眠り
むすこもいつのまにか
隣でねむっている

目が覚める
あら
ひとは簡単には死なないらしい
熱はいよいよ上がりきったようで
そうなるともう
たいしたことはない

その後、
一晩で熱はさがり
その間
むすこは
わたしと一緒にやたらとたくさん
眠ってくれた
親孝行

春分の日
お山はのぼれなかったけれど
熱がでて
身体もいよいよ
春への支度がととのったのかなと
おもっている
ありがたいことだ

春は
いろんなものが
でてくる
それを
すなおにだしてやればいいんだなと
熱がでても
事故っても
人との間にかなしみが噴出して一寸泣くことがあっても
それでも
どこか長閑に
安心していられる

そのことに
それから
こうして生きていることに
それから
おもしろいむすこにも
謝謝
ありがとう
感謝感謝だ

感謝ついでに記しておくと
この熱はおそらく
このごろやたらと痛かった歯の神経が
いよいよ最期をむかえたときだったのらしい
その熱の下がった後
歯の痛みはうずくような感じに変わり

歯医者さんへゆくと
先生いはく
神経は死んでしまった
とのこと

まだ生きている神経を抜くのにはどうしても
抵抗があり
ようすをみていた
けれどもう限界
とうとう死んでしまったという

そうか
30 年以上共に生きてくれた歯よ
これまでほんとうにありがとう
ともに
実にいろんなものを食べました

そして
丁寧に治療してくださる先生よ
ありがとう
となんだか妙にしんみりと
感謝に満ち満ちて
その神経の死骸をとりのぞいてもらった

ああ
歯の最期をあんなふうに
しっかり味わえてよかった
ああ身体って
すごいものである
ああ愛おしいものである

そんな
春分の日であった

謝謝

          「熱 春分」 於 止心庵


ーーーーーーーーーー


この日、
手洗い場に活けられたキンポウゲ
その照りひかる黄色が
心にしずかに残っている

この上なき
ここ
土佐でのうたいはじめとなりました。





16:38 |  trackback: -- | comment: -- | edit