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  日々、ミカンのこと                 

nalu

空き地 

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空き地


つばめが飛んでおります。



このくらいの季節になるといつも

思い出す光景がある。



ましゅがまだ

一日中 籠に寝そべっているくらい 小さな頃。

住んでいたアパートの窓からは、

一面に空き地が見えた。



空き地といっても

のび太やジャイアンが野球をするような

ちょっとやそっとのものじゃなく

見渡す限りのだだっ広い空き地で、

もともとそこには学校があった

ということらしかった。



広々とした空き地は長いこと

立ち入り禁止になっているようで、

草という草が青々と生え茂り、

大きな木が何本も、そびえるように

にょきにょき立っていて

それはそれはうつくしかった。



けれど

都会のまん中のこの土地が

永遠に空き地であるはずもなく、

ある日を境にしてここに

大きなマンションが建てられるべく

人が出入りするようになった。



思い出すのはそんなある日の

チェーンソーの音。



いつか来るだろうとはおもっていた日が

とうとうやってきた。

チェーンソーは大きな音をたてて

木の幹に ささりこみ、

木のくずを飛ばして 刺さりこみ、

めきめきと音がして

木は倒れた。



一本、一本

木は倒れた。



倒れるたび、

その木に住んでいたのであろう

尾の長い鳥が

鳴きながら飛び上がった。

何羽も何羽も 何か叫びながら

飛び立ち、

空を回った。



わたしは鳥のことばがわからない。

あのとき鳥は

なんと叫んでいたんだろう。





とにかく

3階建ての建物より高い

立派な木々で、

太い幹は

空にまっすぐのびて

朝日が葉の間から漏れて

きらきらするのが

うんときれいだった。



何年ここに立っていたのか。

何を見てきたのか。

何年もかけて生きてきた木が、

ものの5分もかからずに

地に倒れる。



鳥の巣をつけたまま

鳥の巣でなくなる。



人間が木よりえらいなんて

誰が決めたんだろう。



人間のすきにしていいなんて

一体いつだれが

決めたんだろう。



この地はだれのものだろう。

この木はだれのものだろう。



どうしようもなく、

とほうもなく

ただ目をびしょびしょにするだけだった。

ほかにはなんにもできなかった。



一日のうちに

空き地から空をさす木は消えて、

寝そべる木と

草だけが残った。



そこから先のことはあまりよく憶えていないけど

毎日かんかんごんごん音がして、

あっという間に

大きなマンションが建った。



こうして町は変わっていく。

こうしてこれまでも

変わってきたんだろうとおもう。

誰が悪いだのという話がしたいんじゃない。





ただ

あのときの鳥はどこへいったんだろう。



この大地や、空気や、この海を

人間のすきなようにしていいなんてことが

これからもずっと続く

そんな未来はいやだ。



と、わたしはここで

おもっている。
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マヨネージ 

台所 |

まよねーじ


生野菜をぼりぼり食べたくて

マヨネーズを買おうか、

いや、作ればいいんだと

手をひっこめ、

しかしどーやるんだったかなぁと

重い腰を上げぬ間に

ある日

「ばーばとつくった!」

というましゅに持たせてくれました。

おお…母手製のマヨネージ!



むかし、

母はよく、マヨネーズをかしゃかしゃと

作ってくれて、

わたしはよく

「お母さんのは すっぱすぎるからやだ」

とか暴言を吐いたものです。



暴言。

あのときはつゆにもおもわなかったけれど

……。

おそろしい子どもじゃ…。



そうしていつしか

かあさんはマヨネーズを作らなくなりました。



なんであんなにも、

ものの価値のわからぬ子だったのじゃろうかと

首をかしげる。

ついでに

ほっぺたをつねりたくなる。



母が合成洗剤から石鹸洗剤に変えたときも、

「服が真っ白にならないからやだ」

と言ったし、

胚芽米をせっせと炊いてくれていたときも、

「お弁当が黄色くみえるからいやだ」

なんて言った。



黄色がなんだってんだ!



って、今はおもうけど。

かっこつけのかっこわるだったんじゃなあ。

今よりももっともっと。



とにかくまぁなんてかわいくない子だったんだろうとおもう。

正直、好みませんね、わたしゃそんな子は。






母はよくぞ、

そんな子の母をやめずにいてくれたものだなあと

おもいます。



それに引き換え、

手づくりマヨを

「おいしい!」とつけながら

野菜をぼりぼり食べ、

明らかに失敗したような

わたしのかりんとうを

「おいしいよ!」 と食べ、

「またつくってね」 とまでゆい、

ぶーぶー言ってた玄米もいつのまにか

おいしいと食べる、

娘。



あんた…

なんてかわいこちゃんなんだ…。



と、同時に

おかあさん あの節はごめんね

と おもう。

あの節もあの節もあの節もごめんね

と おもう。



娘いわく。

「お空から、ママのところがいいって

ましゅが選んできたんだよ」

と、ゆいますが。



お子ちゃまな私を支えるためにきてくれたとしか

おもえぬのです。

ま…ましゅ…。ありがとう…。



そんでもって

いまだにどーしようもない私が

さらにどーしようもない頃からずっとずっと、

温かなものを注ぎ続けて

今に至る母上に、

ほんとうに有り難うとおもう

母の日でありました。



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木と白鳥と虫 

こども |

木にはまあ、いろんなチカラがある。



木の下は、ただの日陰より涼しい。

木の傍は、 いいにおいがする。

木が揺れるのをみると、

こころのざわざわが ほんの少し、しずまる。



わたしはこころが疲れると、

それから目や、カラダや精神や

とにかくいろんなところが疲れたときは

木をみることにしている。

葉をつけた枝が風にゆれて

生き物のように 動く。



ときに狂いそうなこころのざわめきも、

一瞬で

しずかになる。



「人間になりたがっている木があったら、

交換して木になりたいなー」

と、いったら

母に大笑いされた。

「あんたがなれるわけないでしょう!

ちっともじっとしてられないのに」

だって。

だからこそなのに…とおもいつつ、

母があんまり爆笑するので

わたしもおかしくなって笑った。



ちなみに娘は 生まれ変わったら、

白鳥になりたいのだって。

「しろくてきれいで、お空をとべるから」

という。

確かにわたしも空はとびたい。

それに、生まれ変ってもあなたの隣にいたいから

ママも白鳥にする。

というと、

うれしそうに「いいよ」 といった。



おぬし、うれしそうな顔をしたな

と、うれしくなる。

よかった

生まれ変っても一緒にいて いいんだ。





先日『防虫にどうぞ』と、こんなものをみつけたので

買い求めた。

楠



楠木でできた天然防虫材である。

むろん、木の香りがする。

ふたり「いいにおーい!」と騒ぎながら

箪笥の中に1つずつ納めた。

いつか香りが薄くなったら、

紙やすりで削ると 復活するのだって。

すてき!


虫のよりつかない 木の匂い

という先人の知恵。



むし、というとわたしは

娘の前ではなるたけどんな虫にも

ビビらないことにしている。

もともと、

虫にワーキャーいう かわいこちゃんでもなかったけれど。



しかしなんだゴキさんにはさすがに、

内心ぎょっとするけれど

それでも

ましゅの前では平気なふうを装って

いなくなるのを待つ。

まつまつ。



かつては、スプレー型の殺虫剤でやっつけていたこともあったけれど

いつのときもどうも、その死骸を片付けるのが

ほんとうに嫌だった。

勝手なこっちの事情をいわせてもらうと、

薬を部屋にまき散らかすのも嫌だった。



そこであるときから、

殺そうとするのをやめた。

話しかけることにしている。

トイレにいる、とわかって数日は

「ゴキさんこれからトイレはいりますよー

いるなら隠れて下さいよー」

と 大声で言ってからはいる。

するとまあ、見えない。

見えなきゃいいんだ。

きっと逃げてくれてるんだな、

アタマのおかしな人間の声を聞いて。



そんなふうにして、暮らしているけれど

別に我が家はゴキだらけじゃないから、

ご心配せんでいただきたい。



とにかくまあ、

わたしがこわがるせいで、

その虫をこわい、害だ、なんて

おもうのは嫌だ。

そんなふうにおもうから かもしれない。



よくみてみると、

毛虫のモコモコや毛の色なんて

ものすごく綺麗だし、

クモの巣だって、クモだって…



小さい頃 沢山の虫を殺めた

この手の持ち主は今、

そうおもう。



娘にも、やおらキャーキャーいう女の子ではなく

男前でいてもらいたい。

そう、かあさんは願うのである。



男の子にはモテないかもしれないけどさ。



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