
この季節になっても
蚊がいるもので、
昨晩もぷーぷー言いもって
やってくる。
払ってはみるものの、
季節もしまいだからななどと
一寸、
蚊に情を寄せてみたりした。
瞼をさされてみるのも面白いか、
なんてことをおもったような気もする。
そんな人間のこころ、伝わったか蚊、
次第に瞼がかゆくなってくる。
あーやられてしもうたなと
掻くのだけは我慢して眠った。
朝、目が覚めれば
左の瞼がぱんぱんにふくれているのである。
冷やしたところで一向にひかない。
ま、たまにはこんなのも面白いか
と、一日を過ごした。
写真は昨日の帰りしな、
岸壁によじのぼってみた海である。
11月もいよいよおわる。

月、中ごろのこと。
娘と映画をみにいった。
河瀬直美・監督
「玄牝(げんぴん)」
すばらしくよくて号泣した。
愛知県にある、自然分娩をおこなう「吉村医院」
ここへ通う妊婦たち、
いのちのうまれるところ、
院長の吉村正先生、そのまわりを
映したドキュメンタリー。
なるたけ薬や医療機器介入をせずに、
ひと本来のもつ力を、自然なかたちで引き出す。
フィルムのなかの妊婦たちは、
薪を割り、畑を耕し、よく動き歩き、ぴかぴかとして
まるで縮こまったところがない。
おんなのひとの体はほんとうにうつくしいとおもうし、
魔法のような奇跡を生む場所を潜めている。
それもごく、自然に。
おそれず、
ありのままを受け、迎い入れる。
痛みも、生も、死さえも。
そうしていのちはめぐり、めぐるのだ。
身体に子を宿しているひと、
宿したことのあるひと、
いつか宿すひと、
それをいまささえるひと、
いつかそれをささえるひと、
それぞれがれぞれに、つよく受け取るものがあるのでは、と。
おんなは、うつくしい。
いのちがうまれくるということの、ちからづよさ。
いのちがおわるということの、ひつぜん。
あたりまえで、あたりまえでないことの
うつくしさ。
生も、死も
むろん、おとこもうつくしい。
よい映画です。
河瀬監督、さすが。
ぜひともいつか、よろしかったら。
娘にはまだちょっと早かったみたいだけど
いつか、こころのなかで
きっと息をするとおもう。

我が家のハムスター氏が旅へでた。
これまでも氏は、いつだりどこだり旅へでた。
アパートの2階、冷蔵庫の下から洗濯機、でんわ台の下
隅から隅まで。
ときに食料と毛布をたずさえ、キャンプもした。
縄張りに侵入する人間の足は噛んでやったりもする。
引っ越した先でその領域は拡大
畳の上、台所、長い廊下を走り回った。
そうしてひととおりの旅に満足がいくと、
巣に戻ってまるまる。
次の旅へ出たければ、かごをがじがじかじる。
二度三度、
いつまでたっても巣穴がもぬけの殻、
ということがあって、
そのときには二度、
娘の黄色い長靴の中に落っこちていたし、
一度は風呂場の隅に発見された。
いずれにしても救出された直後はごはんを
がつがつ食べた。
しかし今度の旅はそれらとはちがう。
身体はここにある。
中身だけが、すっぽりといない。
とたん身体は軽くなるのだと
毛の生えた身体をてのひらにのせたまま、
朦朧とした意識と
薄暗がりの中、
その境目だけははっきりと伝わった。
ぱたりと、
こちらの幕は閉じ、
ぬくもりを残したまま飛び出した氏は
、どこへ。
娘は、氏の夢をみたといって
何年ぶりかに布団を濡らして目を覚ました。
ハム氏はたぶん、
距離も、かたちも、まるで次元の超えたところへ
いったのだろうとおもう。
触れられぬほど遠いところにいるひとのところにも、
たとえば同時に何か所にでも、
ゆける。
目に見えぬものは、世界全体にとけている。
そういうところへ、
そういうものに、なったのだとおもう。
二人暮らし、というたびに
「ママ、ふたりと一匹でしょ」
と必ず訂正を入れてきた娘。
視界を横切るねずみいろの毛むくじゃら、
おしりをぶりぶりして駆け回るものの
いない部屋。
空っぽの巣籠。
残ったたくさんのひまわり。
冬用に買いだめた綿。
好物のアーモンド。
言い出せばきりがない。
亡骸は娘が学校からかえったら
土へかえす。
ここにもうハム氏はいない。
氏を探すなら、空をみよ。
これから、寒くなる。

娘の遠足。
バスでダムを見にゆくのだそうだ。
放流も眺めるらしい。
そんなわけで今朝はサンドイッチをこしらえる。
むろん、自分の分もついでにこしらえる。
あらやだもうお昼だわ
といってぱかっと弁当箱を開ければ
たちどころにごはんが頂ける、というのだから
お弁当というやつは優れものだなとおもう。
家のなかは冷え冷えしているというのに、
外はぴかぴかの陽気。
そんなわけで今日は妹とベランダでお昼ごはんを食べた。
ござをしいて、
ちゃぶ台もだす。
上空ではトンビが旋回している。
春からはじめた妹をまじえる3人暮らしも
あとわずかである。
こんなふうに、
彼女とままごとみたいな時間を過ごすことはこの先、
もうないのかもしれない。
友だちとも恋人とも違う、
姉妹というもの。
これをくれた父母に、
わたしは感謝しているのである。
さて、そうこうしているうちに
九州電力は玄海原発の4号機の運転をさっさと再開するという。
まてまて、
なにがどうなればそういうことになるのか皆目わからない。
あわてて再開中止を求める署名をし、
枝野大臣にメールを送った。
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【緊急署名】玄海原発4号の運転再開停止を!
http://goo.gl/81jOp
最終締め切り:2011年11月4日 午前9:00
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この国をこれ以上、汚さないでもらいたい。
この国をすきでいさせてほしい。
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