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  日々、ミカンのこと                 

nalu

冷蔵庫 

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先日とうとう冷蔵庫がこわれた。

前々から
時々調子をおかしくして、
冷たくならなかったり
庫内の明かりがつかなかったり
していたし、
そのたびに
がんばってー
もうすこしあなたと一緒にいたいのよー

話しかけ
抱きしめていたりした。
引っ越し前に調子をくずしたときも
これはさすがに潮時かとおもいきや、
復活
こちらへ一緒にやってきて、 
もうどうやって生きたらよいかわからないくらい
溶けるような
夏の暑さもなんとか乗り越えた。

これは
むすめが生まれたときに
購入した冷蔵庫であった

つまり20年ちかく
ともに暮らしたことになる。
 
わたしはなにかと冷蔵庫の前にぺたり座り
背中くっつけ、
考え事をしたり 
ときにやけ酒を呑んだり
本を読んだり
ぼーっとしたり 
泣いたりもした
あるときはハムスターが下に入り込み、
むすめとその名呼びながら
餌を置いておびき寄せたこともあった。


冷蔵庫は静かな振動、音とともに
ひんやりとしながら
わたしたちの生きる傍らに
在ってくれた。

その姿をみていたせいか
彼女なりの日々あってか
娘もあるとき、
家のなかで冷蔵庫の前がいちばんすき

言っていた。

今回もなんとかならないものかと
冷蔵庫に話しかけ
ぱんぱんと叩いてみたりもしたけれど
その横で
むすこも
げんきになってー
と、まだ片言の言語ではなしかけ
小さな手のひらでぱんぱん
そのとびらをたたき
訴えてみたけれども
いかんせん
もはや
なんともならぬ

冷凍室はうごいているが
冷蔵室がちっとも機能しない
あちこちから
腐敗の匂いがしはじめる

うー

観念して
買い替えることにした。

お別れの日はちょうど
新月で
なるたけきれいに拭いて
見送った

むすこもなんども
庭に佇む冷蔵庫にお別れを言いにゆき
ふたり
てのひらをあてる

引き取りと同時にあたらしい
冷蔵庫がきた。

しっかりと冷えるこの箱の
有り難さよ

なにもかも
変わらないではいられない
なにもかも
いつかはおわり
つぎがくる

それは
かなしいだけじゃなく
おもしろいことでもあるのだろう
すてきなことでもあるのだろう
そしてそれはとても
自然なことでもあるのだろう

ようこそ
どうぞ末永くよろしくね

やって来たばかりの冷蔵庫に
はなしかける

むすこがひとりであけては
物色しないよう
開け放さぬよう
そのたびにだめだめいわなくてよいよう

われわれのへいわのため
仕掛けのついた扉止めのシールを貼りつける。


嗚呼冷蔵庫
共にいてくれてありがとう
これまでほんとうに
おつかれさまでした

佳き人生であったなと
貴方が最期に
おもってくれていたらいい
















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土筆 

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こんなに土筆をたべる春はなかった。
先日
むすことローカル線の電車がよくみえる川辺のちいさな土手で
ことし初めの土筆をみつけた。

つくしはこどものころから
みつけるとわくわくする

数年前、河津桜をみにいった折に摘んで帰って
初めて自分で料理してたべた。
料理といったって、おひたしだけれど
胞子がつまった頭の部分もたべられると知り
なんだかおつなものだなとしずかに感激す。

2歳のむすこにはまだ早いような味であろうが
季節ものだからと
ひとつかみほど摘んで、夕飯におひたしにしてみる。

するとむすこはばくばくたべた。
我先にとあっという間にたいらげた。

以来、散歩の道でみるたびに摘んで帰る。
道々、歩きながら袴をとっておけば、かえってすぐに調理できる。
むすこは次第に道中待ちきれず、そのまま数本生でたべはじめる。
かえって、ぼんぼんしてからでないとおなかいたくなるかもよ

いったって、ききやしない。

ぼんぼん、は
火を入れて料理する、の意。
何故だったか、いつのまにかふたりの間ではこう言う。

きょうも土筆摘み、
香りよい三つ葉もみつけ、共にさっと煮て、
お醤油と柚子酢とおかかをかけておひたしとする。
ごま油をひとたらし。

むすこはつくしばかりをつまんでたべている。

このへんではイタドリも食すようで、
先日いただいたらとても美味しかった。
この頃道端ににょきにょき生えてきたそれを、
横目でみながら食べどきをみている。

蕗もあそこへ摘みに行って
筍もそろそろ
春はつぎからつぎへと花が咲き、緑萌え、
せかい、空気は春の気に満ち満ちていそがしい。
 
淑気

そろそろ
ふゆのあいだにみつけておいたさくらの木たちのはれすがた
ふるえるさくらのはなをみに
あちこち、いそいそとでかけてゆくだろう

ここでむかえる
はじめてのはる

かぜがふき
木々が草木が葉が花々が
せかいがゆれて
しずかにふるえ
たしかなものでみちている
その在りよう

ことばをこえて
こちらへとどく

これも
かみさまのことばのようなこと
だと
わたしはおもう








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淑気 

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わたしたちの暮らす
ここ小さな集落には、
ぽつぽつその周りをかこむように
ちいさなお社があり、神様が祀ってある。

八幡宮
天満宮
山ノ神さん
恵比寿神社
金比羅宮

それぞれ年に数回礼祭があって
前日には町内放送のスピーカーから
ご神事は朝の何時からと区長さんの声がする。

先日は金毘羅さん春の礼祭があった。
むすこをおぶって、
山のなかの金毘羅宮をめざす。
なんとなくこっち、というくらいの見当で
行ってみたのだれど、なかなかみつからない。
幾度か道に迷いながら、
山の入口に白い軽トラが二台停まっているのをみつけて
この道でよさそうだ、とすすむ。

細い山道。
途中、草に覆われたうつくしい石垣がある。
棚田か段々畑だった跡かとおもわれる。
つわぶきがあちこち新芽をだして、
鶯のこえがする。

探検気分ですこし歩いていたむすこもふたたび
おんぶ、という。
たしかに、幼子には少々急な上り坂。

息をきらして、
緑のくねくね道をのぼってゆくと
朱いのぼりが見える。
ああこんぴらさんについた、ついた、
とむすこをおろす。

鳥居くぐり
てとてと、むすこあるいてゆくと
すでにご祈祷はおしまいのほうで、
なんとかぱんぱん、と柏手をみなで二回ならす。

青い竹にかこまれた
山中のちいさなお宮に
朝のひかり、
春のおと、くうき、けはい
やはらかく在る。

ほけきょ

あんな細い山道の、少々けわしい上り坂を
杖をついて、ご高齢のご婦人三人ほども来ているからおどろいた。
よくこんなところまで来たねといって
神様からのお下がりのお菓子やバナナをいただく。

帰りはまた杖をつきながら
わたしはむすこをおぶいながら
ご婦人方、道々つわぶきを摘んで
青い山道を下る。

わたしも真似をして
つわぶきを摘んで帰り、
はじめて炊いてみた。
蕗の香りがして美味しい。

そろそろ筍やね、
八幡さまの竹藪に生えるから今度
取りに行こうね、と
ご近所のキミさんがいう。

かわいらしい
うつくしい場所に
来て
暮らさせてもらっているなと
おもう。

ほけきょけきょ






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創造 

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何度でも 思い出し
何度でも 忘れる

何度でも 発見し
何度でも 見失う

何度でも 気づき
何度でも 手からこぼれる
こぼれている

何度でも 転び
のたうちまわり
何度でも 起き
立ち上がる

何度でも 失望し
何度でも 希望にふるえてたっている
わたし
記憶機能がおかしいほどにわすれてゆく 
わすれてゆく

しかしこれ
いつも
あたらしいわたし

まっさらの
はじめましてのわたし

何度でもつくりかえる
つくりかえられる
そして
そうであるならば

いちばんのわたしを創造する

そう
天に
自身に
このくうかんに
宣言をして
今日の日のはじめ
足の平で地とむすび
手のひらを合わす





 



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