
夏至の朝
目が覚める
こわごわと身体
動かしてみるも
頭痛がない
気持ち悪さもない
やった
この日
愛媛、西条市
まんがら農園の里恵ちゃんより
お誘いをいただいていた
19年前の夏至に
此処で産声をあげた
まんがら農園 19周年の記念日
高知、香美市より
服部雄一郎さん、麻子さんご夫婦を
お招きしての
トークイベント
其の場開きに
よかったらうたってもらえまいか
と
里恵ちゃんよりある日
お話をそっといただいていて
二つ返事で
うん、いく
と云いたいところを
当日まで決めなくていい
流れにゆだねて
夏至の朝、
ほんとうに来たい、来れるとおもってくれたら
来てほしい
と里恵ちゃん
が云う
内心、これは本当に行きたいなとおもいつつ
うなずいておく
からの
前日、発熱と頭痛
からの復活
おもしろいなとおもう
やった
行けるんだ
すっかり二晩もお世話になった
イクヨちゃんとチャイに御礼を云って
朝も早々に出発
西条を目指す
とはいえなかなかの道のり
遅刻してしまったのだけれど
恐縮して中へ入ると
里恵ちゃん曰く
ちょうどぴったり、すべてのおきゃくさまが揃って
環となったタイミングであったとのこと
なんとも
とはいえ
服部さんご夫婦とも
お会いするのはまだ三度目
まんがら農園へ来たのだって
まだ二度目
わたしでいいのかしらという気持ちも
一寸こころをよぎる
よぎるのだが
有難く、貴重な機会
有難く頂戴して
息をして
声を成す
ひとが土
大地とひとつになり
寿ぐ
おのおのから
たちのぼりゆく
ひかりのごとき柱
うつくしく蛇行の曲線を描き
天へとのぼる
龍となる
/
しあわせな
光栄なことでした
このような機会をいただき
心から感謝
服部さんご夫婦のお話は
もっともっと聴いていたいような
受け取るエッセンスの多さ、深さ、ゆたかさに
なんども涙ぐみ
また
こころのノートへ書き記す
なんてかろやかで
すなおで
おおらかなエネルギーなんだろう
里恵ちゃんの御飯
お米、お野菜のスープ
身体に沁み入り
実に美味しかった
ゆうたろうくんの米粉シュークリーム
晴菜ちゃんの珈琲
しみじみ、こたびも最高でした
ああ
最期に
新しい本を一冊求め、
「願いを三つ、よかったら聴かせてください」
と麻子さん
(お誕生日のお祝いに)
恥ずかしがることもなく
躊躇なく
するすると
願いが三つ、わたしの口から出て音になる
三つ目の願いは
なんと
麻子さんと同じであった
そうして
なんというか
純粋なところでの
魂の交感のようなひとときを
過ごさせてもらい
それは
こたびの夏至にふさわしい
祝福のような
はじまりのファンファーレのような
とにかく
完璧なものだった
ありがとう
ありがとうございました
身体いっぱいに満ち充ちる
ちから
ひかり
よろこび
ふるえを抱え
手を振って
帰路につく
長い道のり、途中で温泉に入り
すっかり真っ暗となった夜道
雨となり
何故か一寸、小首をかしげる瞬間があったというのに
ナビの云うまましたがって道をゆくうちに
あらら
真夜中の
霧の中の
奥山の、細道
どしゃぶり
さらに間違えて
登山道
次第にアスファルトは消えて
砂利道
斜面に石ゴロゴロ
やばい
細道でハンドルを切り返し
崖に落ちそうになりながら
雨にぬれてその極極を確認
こらやばい
そんな大ピンチの折
わたしは何故か、あかるかった
真っ暗闇で
このことを
愉しんでいるようなわたしが居た
後ろですうすうと眠ってくれているむすこ
あっぱれ
細道の切り返し成功わたし
ないす
山中
ヘッドライトに照らされて
駆けだしてくる
兎
そのちいさな四肢、おしり
びっくりさせてごめん
といいつつ
その姿に励まされつつ
なんとか
かんとか
家に辿り着く
そんな
二〇二三年
夏至のことであった
ふふ
どうもありがとう

夏至の旅
つづき
高知 koya
記憶と記録
六月二十日
/
ひゅんと
飛行機はとび
着地
還ってきたるは
土佐
日差し、暑いくらいである
むすことお気に入りの温泉
湖畔游 の湯に浸り
香美市
koya
イクヨちゃんの処へ一泊
お世話になる
すでに滞在中の
月の海 cana ちゃんと再会
名犬チャイともに
美味しい夕餉をごちそうになる
ううううううまい
うまいワン
むすこ、いつの間にか
ふたたびチャイと仲良し
なにかたべさせている
イクヨちゃん
イベントの続く忙しいなか
ほんとうにどうもありがとう
〇
さて夜のこと
早々に布団に入ったものの
夜更けにふと寒さで目が覚める
おやや
南国だからと調子に乗って
タンクトップで眠ったのがいけなかったか
と
ごそごそ
長袖を着る
スパッツもはく
靴下もはく
それでも寒い
さむすぎる
次第に
悪寒で歯ががちがちいう
おやこれはおかしい
これは寒いのでなく
熱が上がるやつだ
発熱前のふるえるやつだ
どうしよう
ひとまず、むすこを湯たんぽに
布団に隙間なくくるまっている
が
さむくてさむくてねむれない
ひー
朝方、ようやくうとうとと眠り
そんなものだから
みなが起きだしても
なかなか布団から出られない
熱は、あるのかもしれないが
さほどではないらしいが
頭がずきずきする
夏至だ
夏至
そういえば
近年のわたしは
立春、夏至、など季節の節目ごとに
熱を出す
または身体になにがしかの
異変がおこる
そのことを失念
わすれていた
しかも明日は夏至
ひかりの極まる日
いかにも
熱がでそうなやつでないの
と気が付いてももうおそいのである
すでに
熱が出て頭痛がするのである
くまった
どうしよう
こっそり
台所に立つイクヨちゃんに
あのう、熱がでちゃったみたい
などおそるおそる、言ってみる
わあ、
と彼女は云って
だいじょうぶ?
と
薬草の粉を練り、
湿布を拵え、
背中に貼ってくれた
本日の仕込みで忙しい最中、なのにである
しみしみと
背中から植物の効能がしみわたる
ああ
ありがとう
いざってときは
cana さんにソロライブしてもらおう
と
イクヨはからからと云う
この
この方のこういうところ
深刻になりすぎず、かろやかなところ
救われる
支度もままならず
床にころがっていると
cana ちゃんと会う
おはよう
実はわたし
熱がでています、、
頭いたいです、、
とわたし
まあ、
と cana ちゃんは云って
ささっと調合したハーブティを淹れてくれる
この香り
湯気、うつくしいお茶の
身体にしみわたってゆくこと
つづき、
ちょっとお手当しよか
と
テラスに座り
頭、肩、首などをマッサージしてくれる
(ちょっと朦朧としており、記憶は定かではない)
とにかく
やはらかなひかりのシャワーを浴びるような
やさしい
安寧のお手当である
このふたりの女性
現代の魔女である
と
浮遊するようにおもい
手を合わせる
ほんとうにありがとう
〇
ふたりの精鋭、魔女治療のおかげさまで
なんとか
唄えるような気がする
ひとまず熱も頭痛も
静まっております
むすこちょろちょろするなか
いつの間にか
白き koya へと
おきゃくさまは集まり
遠くは岡山より
お庭のハーブの花束をもって
はるばる
来てくださるかたも居られる
〇
この日
この環のことは
身体具合のこともあってか
おわった直後でさえ
鮮明な記憶がない
どこかこの小さな白い空間が
通常の時空をとびだし
遥かかなた
宇宙や太古や
水や山々や光や闇
動物、植物、いきものたち
にんげんの記憶
その
垣根、境界線をこえて
旅をしていたようであった
この日は特別に
cana さんが同じ空間で
音を成してくれていた
音叉やシンギングボウルの波動
倍音が交差する
ある瞬間
その音は
cana さんという 「ひと」 から
離れ
ひとりでに成りだした
わたしの身体を通ってゆく
音もまた
「にんげん」
という個体から離れ
互いの音が
ゆきかわし
相乗し
それは実に自由で
思考での上限をかるがると越えてゆく
後のシェアの折
cana さんはこの瞬間のことを
「 信頼 」
と云い現わしてくれた
信頼していいということを
知りました
と
ひとりでは成しえない
独特のときを
御一緒させていただけたこと
この貴重な機会をくれた
cana さん、
またその提案にひょんと乗ってくれた
イクヨさん
また
この日に
足を運んでくだすった方
おひとりおひとりに
こころより
感謝申し上げます
当初
充分な子守がおらず、内心どうなることかと
案じていたむすこも
さいごには
わたしと一体となって
床にころがり
実にリラックスしていて
そのことにわたしもより
自由になっているという
この感覚は
はじめてのことだった
子を
あたたかく環にむかえてくだすったことも
貴重なことで
どなたさまにも
深く感謝いたします
〇
余韻、余白を
山を見渡し
やはらかに過ごし
むすびにはこばれてくる
好好食飯店のお食事は
色も鮮やかにうつくしい
夏の気
エネルギーの充ち満ちる
イクヨちゃんらしい
素晴らしいものだった
おいしい
おいしいと
なんどもなんども云って
食べてくださる方も居て
それにみなで
うなずきながら
あたらしくなったわたしたちが
身体のなかに
あたらしいちからを咀嚼し
とりこんでいた
場をひらき
食を拵える
その大役を
いつも
太陽のように担ってくれる
イクヨちゃんに
心から感謝
どうもありがとう
御馳走様でした
〇
おしまい
環が
むすばれたときには
ふたたび
頭痛が大波のように
やってきたため
お見送りも充分にできず
ふらふらと退室
(大変失礼いたしました)
だれもいなくなった koya に
にべもなく寝転がり
眠ること
数時間
その間に
むすこを連れ
アンパンマンミュージアムの公園で
ブランコをくりかえし、押し
存分に遊ばせ、
かき氷まで食べさせてくれた
あたたかな魔女のおふたりには
もう
ただ
ありがたく
感謝しかない
そうしてくれること
こうさせてくれること
この安心に
朦朧と夢うつつながら
涙のでるほど
ほっとしているわたしが居り
甘えて
眠れるだけ眠り
夕暮れとなり
夜となり
朝となる
無事に
三つの環をむすべましたこと
支え
見守り
助けて下すった方々のおかげさまであります
ふかく
ふかく
謝謝
夏至の朝
幻のように
熱は下がり
頭痛も消え去り
静かな山
片隅より
夏至の太陽はのぼり
鳥の囀りがした

夏至の旅
つづき
山梨 シロテナリ
記憶と記録
/
六月十八日 新月
ひかりのはしら
一日をとおした三つの会
朝から
お迎えに来てくれた
SHIDHEさんの愛車に同乗させていただく
これ
どんなにたすけられことか
どうもありがとう
山々から高速を下り
川渡り
ここ
シロテナリ
うつくしい処
緑のなかのひかり
ちいさな階段をあがり
二階には場をしつらえてくださっており
円く並んだ白いお座布団
中央には
苔と水晶の箱庭のような世界
白い皿にあしらわれている
精霊の住処
〇
夏至ノ環 音ノ禊
こちらに於いて
環をとりかこみ
その
ひそやかな環から
とびだしていったもの
おもいだされたもの
ゆすられたもの
うまれたもの
うまれたこと
そのひかりは
結晶
わたしたち
そのものであった
むすびのシェアをとおして
ひとり
ひとりの
その背景が
ゆるやかに
ひらかれ
てのひらにそっと
のせたたからものを
みなで静かに
のぞきあうような
そんな
いとおしいものであった
わたしたちは
ゆるやかにつながりあう
たいせつな同志
このせかいに
ちらばっていきる
こまかな
じゅんすいな
ひかりなのだ
と
はるばる
この朝に
足をお運びくだすった方々
おひとりおひとりに
こころから
御礼申し上げます
有難く
しあわせな
尊いことでした

栞草
あわい ひかりとほす 夏至の食卓
桃色に注がれる
淡き甘露な飲み物から
はじまり
ひとさら
ひとさら
透明で
太陽のひかり
纏い
かろやかで
エネルギーの充ち
魂の祝福のような
お食事でした
ゆきのさん
御馳走様でした


午後からの
Stone in your Spirit
Crystal & meditation
SHIDHEさんの導きにより
みなそれぞれに
少女のようになって
クリスタルをみつめ
クリスタルと対話し
クリスタルその存在を
自身の内に携える
わたしの選んだのは
きいろにひかり
こっちをみていた
きいろちゃん
(SHIDHEさん、名前がやっぱり覚えられません…)
あたらしいとびらをひらく
その勇気、ちからを宿す
石
やはらかく
なごやかな
やさしいとき
参加させていただいて
光栄
しあわせな
ことでした
SHIDHEさん
どうもありがとう
〇
此処
シロテナリをいとなむ
ゆきのさん
ゆうじさん
厨房に立つ
おふたりの後ろ姿
川映す窓からのひかり
その
絵のような一瞬のうつくしさが
こころにのこっている
ここで唄えましたこと
御一緒できましたこと
こころより
ありがたく
しあわせにおもいます
ありがとうございました
〇
帰り道もまた
同乗させてくれたSHIDHEさん
どうもありがとう
この日は一日
むすこを
懐かしの
「こどもの国」へ
連れ出してくれた娘
これに同行し
ともにおもいきり遊んでくれた
娘の親友 青ちゃん
ふたりにも
こころより
どうもありがとう
すっかり日も暮れて夜となり
お腹ぺこぺこで帰り着くなり
待っていてくれたむすめが
拵えてくれた御蕎麦の
美味しかったこと
こたび最後の夜に
約束していた花火をもって
川辺で灯す
ひかる微かな火花
むすこ
眠い目をこすりつつ
ねむくないからお散歩したいといって
三人
手をつないで
あるく
夜の道
前夜
むすめのつくってくれた
誕生日ケーキのつづきを
夜中
ふたりで食べ
小声で話し
夜は更けて
朝となる
行く前から
会えるのはうれしいが
別れるのがもうつらいといって
いた
むすめのことばが
身に沁みて
よくわかる
せつない
朝であった
バス停まで
見送ってくれた娘に手を振り
むすこは涙ぐみ
というか泣いていて
わたしも別れがたく
しかし
ゆかねばならぬ
ひこうきにのるのだ
いとおしいむすめ
だきしめ
バスにのり
とびらは閉まり
ぶるるんとバスはゆく
手を振って
わたしたちは
人混みの東京駅ですこしおろおろし
つばさにのって
かえった
かえってきた
またあえるときまで
それぞれに
それぞれを
生きて
いるように
そこになるたけいつも
ほんとうのものと
愛がながれているように
(写真はすべて、SHIDHEさん撮影。拝借いたしました)

夏至の旅より
随分と日が経ってしまった
この頃はゆっくりとしか
すすめない
そういうときなのかと
そこからみえる景色を味わうことにつとめる
テンポよくすすんでゆくせかいのみなさま
かたじけなくも
ごめんそうらえ
さて
早七月ではありますが
旅、環の記憶と記録
感謝をここに
〇
六月十四日
葉山 cibo
お集まり下すった方々
また
いつもあたたかく迎えてくれる
cibo 主 みとなさん
また
素晴らしいお食事を拵えてくだすった
野菜料理 めいさん
ほんとうにありがとうございました。
梅雨空で
しっとりした空気のなか
濃厚な緑、植物たちの香りと気配
デッキから小川を覗けば
母さん鴨のまわりをふりふりおよぐ
コガモたち
一寸で通り抜ける
翡翠色をしたカワセミの背中
ああ
ただいま
またひとまわり大きくなった
檸檬の木
冬至以来の方
また
初めましての方
お久しぶりの方
どちらも心から嬉しく
胸いっぱいで頭を垂れる
それは
なんとも
うつくしく
なんとも
静謐にまもられた
しあわせなときだっただろう
ともにしたおひとりおひとりに
深く感謝申し上げます
夏至にむけ
心身の支度を調えるつもりが
出発間際に軽く体調をくずし
喉を枯らしてしまい
内心この日までにどうなるかしらと
どきどきしながら
飛行機にのった
でもどこかで
だいじょうぶ
というきがしていたら
だいじょうぶ
この日の朝にはかすれていた声がもどる
夏至の関門を通り抜けるべく
やってくる
大きな流れや変動の波のようなものに
くるくるとまかれて
まったくの暗中模索
久しぶりの心の落下
のような心身状態でありながら
ふと
ああ
せかい
まわりに
ひかりがみち極まるとき
闇もまた深く
浮かび上がるのだ
と
どこか納得す
そんな
心もとないわたくしが
そのわたくしのまま
環のなかに座り
とおりぬけてゆく
おとや
ひかり
気配や
あらゆるいのちたちの
こえ
ふるえ
記憶
希望
このせかいのありよう
それらを
ともに
とおりぬける
おのおのから
響きわたり
かわされる
音の波
声音はかさなり
うつくしい
ハーモニーとなる
ここに
肉体をもってうまれ
さまざまをくぐりぬけて
生きるもの同士の
ゆるやかな
調和
その環の真ん中に
螺旋または
天へとのびる宮殿のような
ひかりの層を
それぞれに
見上げこころ
充ちてゆくような
とき
ば
となりました
ひとつとなった
また
同時に
ひとりひとりのひかり
あらわになった
そのあとの
野菜屋 めい さんの
お昼餉
色ゆたかなお野菜たちの
ぴちぴちをそのままに
ひとつひとおつに
丁寧にうつしかえたような
なんとも
うつくしく
なんとも
美味しい
なんとも
こうふく
そのものの
お食事とデザートでありました
めいさん
ほんとうに
ありがとう
〇
シェアリングでは何度も
涙あふれながら
それぞれの
歩いてこられた
背景、道のりのゆたかさ、尊さを
交換、交感するようなひととき
そこには
いとおしさと
やさしさと
ありがとうしかない
ほんとうにありがとう
ありがとうございました
〇
帰りはめいさんの車にのっけていただいて
お願いして、ちょこんと
海辺でおろしてもらい
懐かしい海の水に
足をひたし
おかえり
というこえを聴き
ただいま
を云い
懐かしい道を
てくてく あるき
親しい神社に
ふと 立ち寄って
てのひらをあわせ
バス停を幾つもあるいて
懐かしいバスにのり
ゆられ
ゆられてかえった
一日
むすこをみていてくれた父母
どうもありがとう
まっていてくれたむすこ
ありがとう
その日は
妹の家に皆であつまり
幼子は三人
むすこは女子の女子らしい部屋や世界に
飄々と馴染みつつ
桃色のミニーマウスの電車にまたがり
滑走
会うなりすかさず
ビーズをつなげて作った
ブレスレットをプレゼントしてくれた
恥ずかしがり屋の姪っ子よ
ありがとう
六月うまれのわたしの誕生日を祝うべく
ケーキを拵えてくれた妹よ
ありがとう
このまま
眠ってしまうかとおもうほど
ほっとする
賑やかな
夜であった
そんなふわふわ
ふらふらのわたしを
むすこととも家まで連れて帰ってくれた
いとおしいむすめ
ありがとう
みなみなさまに
かくも
感謝を込めて
謝謝

七月三日
父と母の結婚記念日であった
物覚えのよろしくないわたしであるが
この日は何故か
ほぼ毎年、覚えている
数日前から
ああそろそろだなと
手帳やカレンダーをみておもう
なにかをプレゼントするわけでもない
ただその日に
おめでとう
ありがとう
とメッセージをふたりにおくる
そういえば
と
おもいだす
もう随分と前、
おそらく父と母が横浜へ住むようになって
まだ初々しいころであったか
たしか
わたしが娘を授かったばかりのころであったか
ある年の記念日
ふたりが都内のどこかでお祝いに食事をしようと
待ち合わせをしたことがあった
たしか自由が丘あたりであった
そのことにわたしは
そわそわ
うきうきとしていたので
健忘症のわりに
よく覚えている
仕事帰りの父は母に
花束を持って立っていたらしい
それが駅だったのか
店先であったのかは定かでない
定かではないが
母はそれを恥ずかしがり
やめてくれと云ったのだそうだ
なんとも母らしい
以来
記念日に食事はすれど
花束を用意することはなかったようす
わたしはこの話がすきで
父のことを
すてきだなとおもう
そういうところが
父にはあった
クリスマスには
母、私、真朱(むすめ)、妹へと
それぞれにカードを選んで前もって用意してある
そのクリスマスカードを選びに
都内の大きな文具店へ立ち寄る
父の姿を想像する
あれはなんのときであったのか
思いだせないけれど
たしか
父の退職の折
または
その年のクリスマスか誕生日
わたしと妹それぞれに
金貨のネックレスをくれた
金の価値はきっとずっと変わらないから
と
カエデの葉の刻印された金貨のついた
ネックレスであった
わたしは幼少のころ
金貨や小判が非常に好きで
憧れのまなざしで
それらを眺めた
友人の古い家や展示品として
額縁に並び、飾られるのを
うっとりと
なんなら
だれかあれをわたしにくれるところを
想像したりした
しかし
いよいよ本物の金貨を手にする
そのときのわたしは
ゴールドよりも真鍮を好むおんなに移行していたため
そのネックレスを常用することはない
父と食事をするときなどに
さりげなくそれを
身に着けている妹をみて
すてきだな
とその姿をみる
わたしはといえば
幼少のころからの
宝物を仕舞う引き出しの中に
それがある
この頃は
その引き出しをむすこが開けたがるので
荒らされたそのなかを
調えながら
その中身を確認する
黒くひかるすべすべした石
祖父母からの最期の手紙
飼っていた犬の毛
インコ、ひよこの羽根
天文学部の友人がくれた月の写真
密かにすきだった男の子がくれた天然石
そのなかに
父からもらったネックレスが
当時の小箱に入って在る
時折
うつくしいな
と
その思い出とともに
手に取って眺める
それいとおしむ
話が随分と反れてしまった
そう、なみのひだ
ナミの日
と名付けたのはむすめで
彼女もまた、わすれずにその日を覚えている
で
娘も祖父母にむけお祝いのメッセージを送った
という話をしながら
彼女が
なみのひ
と呼ぶのを知る
なみの日
波
は、わたしの名
nalu
のハワイ語の意である
わあ
と
ちいさく声を出す
今夜はふたりで外食をする
と
ふたりから返事が来る
カウンターに座って
食事するふたりはとても
佳い顔をしている
その写真をうけとり
嬉しく涙ぐむ
四十六回目の記念日
なのだそうだ
46年
その永き日々をともに生きている父と母に
心から
ありがとう と
おめでとう を
贈る
父は
年齢とともに
自分の記憶が薄らいでゆくのを危機としてなのか
この頃
非常にメモ魔である
小さなノートに
なにかにつけ
メモをとるのだそうだ
先日
実家を久しぶりに訪れた折
部屋の片隅に置かれた
何冊もの小さなノートをみた
まるでひそやかな
学者のようだ
と
わたしはそれを
いとおしく
すてきだなとおもっている
| h o m e |