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  日々、ミカンのこと                 

nalu

石のこえ  

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2014,07,satomi 016


先日、鎌倉山
山のスコレーでおこなわれた
a stone in a vision

この日を迎えた朝、
目覚めてすぐに机に向かって書いた、散文を
この日
唄の合間に朗読させてもらった。

ここに書き残しておきます。

・・・・・・・・・・・・・・・

いつの頃であったか、
子どもの頃拾った石がある。
黒く、真黒で、すべすべした丸さんかくの石。

当時住んでいた北の町には、コンクリートやアスファルトは
車のはしる大きな通りだけで、
わたしのまわりには砂利道や土、草の道ばかりだった。
その、いつも近所の子らと遊びまわる砂利道の中で
おにごっこをしていたのだったか、
ただ走っていたのか、定かでない記憶の中で
わたしの眼に石の飛び込んできたときの瞬間の
その景色が
そこだけ切り取ったように鮮やかに、
わたしの中にある。

周りの空間もかえるような、
そこだけ静かにひかるように
わたしにはみえた。
わたしだけの宝物をみつけてしまった

そんな気持ちで、握りしめ、家へかえり、
キャラメルの箱に飾り紙を丁寧にはりつけて
宝箱をこしらえた。
赤い地に、いくつものハート柄のついた
お気に入りの紙が貼ってあるその箱に滑る込ませると、
石はちょうどぴったりそこへ、おさまった。

ときどき、とりだしてそのすべすべをたしかめる。
夏でもそれがひんやりとしているのも魔法のようであったし、
とくべつな気持ちでそれを撫で、ほほずりをして、うっとりとしては、
また箱にしまった。

ひそやかな秘密というものは
興奮の熱を帯びていてときにこっそり、
誰かに打ち明けたくなったのだろう、
母にそれをみせたことがある。
もちろん、
わあすてき、と言ってはくれているけれど
私が感じるこの同じだけの高揚はどうも伝わりきらないと
子ども心に感じて、すこし歯がゆいのと同時にこれは
ああ、わたしだけのとくべつな石なのだと知る。

以来、北から南の町へいくつか引っ越しをしたときも、
節目節目の物整理のときにも
迷わずそれは宝物として残され、
引き出しや、大事なものを入れる缶カンの中で
わたしと共にあった。

当時あんなにすてきとおもったハート柄の包み紙が
まるでちんけにみえるようになっても、
箱の中の石は見るたびに、とくべつでありつづけた。

やめるときも健やかなるときも、
泣いて途方にくれたときも、
ひとり川原や浜辺で
人以外のものと話をしてバランスをとり、
また日々へ戻っていくときも、
いつもいつも傍らで息をしていた石は、
大人になり子を産みその子がずいぶんと大きくなった今も、
ひきだしの中に在る。

あるときふと、無性に胸がざわついて眠れない夜があった。
自分のなかの闇が見えすぎてこわくて、
途方に暮れてどうしようもなかった。
眠り方もわすれ、
暗闇をみているのか目をつむっているのか
ぐるぐるしながらふと、
ひきだしから石をとりだして握りしめてみる。

薄闇のなか、
それはなつかしくすべらかで
ああわたしは、このすべすべをとても愛していたのだと思い出す。
手の中で最初ひいやりとしていた石は、
だんだん私の体温と同じくらいになって、
いつのまにか眠っている。
朝が来て
目が覚めるまでずっと、石を、握りしめていた。

ふらふらと、
押し流されるように
自分の中に世界への不安、世界への不信がふくらみ
のみこまれそうになったとき、
それは同時に
わたしへの不安、不信であることに気づく。
足もとをふらつかせて、
頭のなかが渦をまいてはちきれそうになったとき、
にぎりしめた石、
胸にあてた石は、
すっぽりと、わたしを地球のなかへつつみこむ。

すべてをすべらかに、あたたかく
内包する。

そうして眠りについたわたしは
また新しい朝を迎える。
私がわたしであればいいということを
この世界を信じて、
わたしを信じていいということを
ここに二本の足で立ち、
今日を歩いてゆく勇気を、覚悟を、
わたしのなかに小さな種を入れるように
さずけてくれる。

すべてのひとが、
先頭に立ち、
自分の人生を歩いていいのだ。

誰か任せにも、なにかのせいにもしない。
曇りなく、麻痺させることなく、
自分の中心のさししめすところに向かい
今日を、今を、
生きるチカラを、
くれるのだ。


・・・・・・・・・・・・・・・・・

すばらしい体験と、
すばらしい時間でした。

主宰で、その夢のような空間をつくってくれた小川くん、香りのWELTさん、石のEDANEさん、
時空を共有してくれたおひとりおひとり、
ほんとうにありがとうございました。

かしこ









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