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  日々、ミカンのこと                 

nalu

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八月十五日

白い服をきて海へいく
歩いていく

おむすびをむすんで
もっていく

雨がふると傘をさす
おなかがすくと
おむすびをたべる

はれて
くもって
あめがふって
かぜがふいて
くるくるとかわる
ふしぎなお天気だった

きょうは海にははいらずに
ながめるだけにする
なんとなく

ゆうゆうとおよぐ
さかながいて
釣り糸をたれるひとびとがいて
おもわず
にげろー と
こっそりねんじている
なんとなく

雨がふると
水面に輪がはじける
いくつもいくつも
かすかな波紋が
ひろがって、とけていく

とうめいな水に足をひたして
じゃぶじゃぶあるく
とうめいなイカが
すすっとにげていく
親指くらいのちいさな身体

おひるころ
小さな小屋に雨宿りをして
めをつむる

ななめに注ぐかすかな雨と
注がれる海がある
おだやかな水面がある

てくてくあるいて
たれもいない堤防へ立つ
雨が
風が
ななめに注ぐ
だんだん
つよくなる

魚がとびはねる
鳥がとんでいく

雨にまぎれて
うたっている
というより
こえが
層のなかふるえひろがって
雨とか
風とか
海とか
雲とか
いくつもが
交互に入れ替わって
まじっていく

だれもいないから
だいじょうぶ


家につくころには
ずぶぬれで
すっかりひえて
すこし熱が出て
しばらくねむる

目が覚めたころには
夜とゆうがたの境目で
草木の緑がひかりだして
ぜんたい
闇へととけていく庭と
向かい合って、うたう

蛙や虫のこえが
ともに高まっていくのを
しずかな高揚と
巨大な耳になって
きく

ああ
わたしたちは
ひとつなんだ

だから
だから、
だから

そんな
七十二年目の
夏の日だった














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