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  日々、ミカンのこと                 

nalu

人参と雨 

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畑に蒔いた種から、
人参が芽を出した。

むすこはいつからか
ヨネさんの畑から人参をひっこぬいては
近くの水桶で洗い
ぽりぽりかじりながら散歩をする。

むすこは朝よく勝手に家を飛び出し、
お隣のヨネさんのうちに上がりこんで
ふかふかの椅子にこしかけて
ヨネさんとテレビをみている。

ヨネさんは
あたしは人参好きでないけんど
みんな植えとるから植えとるだけ、
いくらでも抜いて食べてちょうだい

おおらかにいってくださるので
むすこはヨネさんの畑の横を通るたび、
または家を出た時から
にんじんにんじん
よねさんのにんじん
といって、
いちもくさんに人参のところへはしってゆく。

いつの間にか人参の葉っぱがどんなだか
覚えていて、よその畑でもみつけると
採りにいこうとするので
なんとかとめる。

そんなわけで我が家でも
まだ寒いうちに耕していた畑に
人参の種を蒔いた。
籾殻をかぶせておくとええよときいたので
脱穀機周辺から拾ってきて
籾殻をまき、
毎日むすこと水やりに通い、
あるとき
ぽよぽよと小さきみどりの線が生えている。

もしやと数日通うと
やはりこれは人参の芽がでたのである。

わあかわいらしい

じゃがいもは力強く土を盛り上げて
勢いよく芽を出し、
その日の夕方はキミさんが
芋の芽でたよと
知らせに来てくれる。

キミさんはわたしたちに
畑を貸してくださっているご近所さんで、
畑代を、というと
そんな、誰もやる人おらんのやし
すきに使ってくれたらいいから
とゆうてくださる。
鍬や道具まで貸してくださる。

しまいには先日、鍬を二本もいただいた
いとおしい字で キミ と書いてある。

はじめてこの畑をみたとき
なんてすばらしいとこじゃろうかとおもった
こんなとこで畑ができたらなあと
おもった。

かわいらしい山がみえ
あっちには海がみえる
となりのこんもりしたとこは八幡神社で
小脇には一本のひかる線路があって
むすこは電車がくると走っていく
おひさまがよくあたり
傍らには枇杷の木が生える。

キミさんヨネさんのうつくしい畑の奥に
わたしはささやかに畑をはじめることができている

ゆめのようだ

と、ときどきおもう。
畑に立ち
空の下で息をする
わたしをとりかこむ小さな粒粒たちの気配を
浴びるように居る

じゃがいも
日ごと伸びやかに葉を茂らせ、
先日いただいて植えたばかりの
むすこの好物・憧れの菊芋も芽を出し始め、
ハーブのいくつかも
微かな芽をみせはじめたところ。

庭の小さな畑のようなところからも
小ネギ
三つ葉
パセリ
ローズマリーにフェンネル
ぽちっと摘んで台所へかえる。
勝手に生えてくるニラを切ってきて餃子に入れる。
ノビルをひっこぬいて、ぬたにする。

ああゆたか
おおたのしい

わたしはみどりのゆびではないけれど
すこしずつ
こういうそんざいたちと
ともに
いきている

そう
じんせいは
ゆめのようだ
ゆめのなかを
生きている


種蒔きの あとありがたき 甘雨かな



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