
今朝は
山の神さんのお祭り
そのご神事があった。
雨があんまり強いので
迷った挙句
むすこは保育園に送り届けてから
ひとり
傘をさしてゆく
あるきながら
雨にけぶるそこいらの景色
雨水をはねかえす田
ゆれる木々、葉、竹
線路
そのむこうの海の気配
いつもはむすこと歩いているため
こんな気持ちになったことはなかったが
傘をうつ雨にかこまれて
ああ
わたしはこんなところへきて
ここで生きているんだ
と
なんだかすこし遠くから眺めるようにおもった
以前暮らした町よりはるか遠く
飛行機も
そこから電車も車も延々乗って
やってくるような
この土地に
むすことくらしている
すっぽりと
ここだけで完結するような
次元のことなるこのせかいを
わたしはえらび
ここにいる
そのおかしみ
そのふしぎ
そのありがたさ
そのせつなさ
この
かなしみとこうふく
よくわからないものにつつまれて
ご神事をおえたかえりみち
空から降り注ぐ
雨の白い線
そのゆたかな音のなかで
泣くに任せて泣く
それは
40を過ぎていても
子のいる母であっても
暮らしがあっても
そんなこととはまったく別の
ただ生まれてきた
いっぴきの、いきもの
としての涙
こどものころと
なにもかわらない
理由をかんたんに広げて紐解くことの叶わぬ
はるか奥底から
みゃくみゃくつづくような
そこがふるえるような
ひとときを
泣いて立つ
川上から流れ来る
濁流のあげる飛沫を
その躍動を
しばしみて
家をめざしてかえる
痛む足をひきずるひと
夫を亡くしたひと
それぞれを
まろく包みながら山の神は居り、
傘をさし
しばしこのときを過ごすひとびと
やはらかく
それぞれにみな
すこしずつ年をとり
名で呼び合い
かぞくのように
暮らす
まもなくもうひとつきで
ここへきて
まるいちねんとなる
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