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  日々、ミカンのこと                 

nalu

三ノ歳 

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三歳になった息子と
春探しの探検に出かける

少し長い、気に入りの散歩コースを
久しぶりふたりで歩く

本日のミッションは
つくしを 見つけること

と初めに宣言、確認する
つくしは息子の好物である

探検冒険の日には
というか
週末の休みの日
彼はお気に入りのオーバーオールを
着用している

坂を下り、
菜の花の黄色に歓声をあげつつ
トンネルをくぐる

そこはかつて人の打ち捨てた物たちが独特の気配を放ち
すこしひいやりとしていて
うすらこわい
ゆえ、しっかり名乗り挨拶しながら
通り抜ける

神社を囲む竹林の斜面を見上げつつ
青竹の向こうにはささやかな田んぼの跡

大小の水路の間をゆくと早々に、おお
つくし見つける

つくしつくし!
初物の愛おしい姿に
興奮してふたり
胞子のついた青いやつが瑞々しくておいしいよ
などいって摘む

さて、湿地には
クレソンがある
セリも摘む

汽車の音がして
走ってそれをみる

流れる水の音がひかる
降りたい
触りたい
というので
小川を渡すコンクリとコンクリの間を
抱っこして飛び越えて降り
せせらぎに触れる

ほーーーーほけきょ
この春初めての
鶯の声を聴く

いい声だねぇ
と 鼻の穴膨らませて顔を見合わす
鶯 もう一度鳴く
きれいだねーと拍手
ふたたび鳴く
鶯とわたしたち
これ暫し繰り返す

そのうちに
あのコンクリを飛びたい
と、云いはじめる
え、結構幅があるよ
と、手を繋いでぴょんとさせる
も、いやひとりでとびたい
と、云う
ちょっとむつかしくないかい?
と、問えども
とべる、いける、
と、云ってきかない

ので
ひやひやしながら
すぐに手をだせるようにしながらにもって
コンクリのこちらで身構えると
ぴょい
息子、こちらへとんできた
いと軽がると。

ぴょい
足元がひやっとしたのは
こちらだけである

わあ、とべる
喜んで繰り返す
それをみるうち
涙がでている

こんな幅を
とんでいる
できるって
知っている

鶯が鳴く

息子が生まれて
数日後 ようやく胎盤が出て
そして眠り、
目の覚めた朝にも
その春一番に鳴く 鶯の声を聴いた
ことを思い出す

あのときの
生まれたばかりの瞳
こちらをみた最初の瞳
あの子が
いま
コンクリを、とんでいる
はるのなかだ


はじけ損ねたガマの穂を
むしってとばす
雪のようにそれ
とんでゆく

たんけんぼうけん、
たんけんぼうけん、

唄いながらあるいてく
シダの葉っぱを両手にひらひら
鳥みたいにあるく

陽だまりに
ハハコグサ
これから黄色い蕾をつけようとしている

枯れ草ゆれる
坂の小道
途中抱っこしてくれとか云うが
坂はきついからもうちょっと歩いてみて
というと
次にはかけだして
ぐんぐん小さくなる

坂の上には
こんぴら山
お参りして
ご挨拶して
弁当をひらく

眼下にはひろく
うすあおい海が
ひろがっている

息子は主に果物をたべ
わたしは余計におむすびをたべる
風が吹く
黄金色の枯れ草がゆれる
竹がしなる
桜の蕾はまだ堅そうである

草の道
むすこ
あっという間に転げるように坂下り
振り返って
誇らしげ

見晴らしの佳いお墓をぬけて
梅の花を横切り
蕨はまだのようで
斜面につくし摘み
脇道に逸れ
しゃがみこみ
ホトケノザの花の蜜を吸う
息子、律儀に私の分の花弁も抜いて
はこんでくる

ちいさな桃色の花の蜜を吸う
かすかに甘いような気がする
息子夢中でそれを繰り返すので
勘違いでなく
これはうっすらとしかし
きゅっとしたひかりのようなエネルギーを
吸っているのだろう
そこいらは気がつけば
ちいさな桃色の花弁だらけになっている

これは、真朱の分
と、姉の分もわたしに渡してくれるので
それは
持って帰ることにする

姉は暫らく帰らぬが
部屋に生けておくことにしよう
咲いた花弁吸った跡にのこる
いくつかの蕾
ビロウドのように愛らしいのでそれも
小籠にもってかえる

これを部屋に生けておいたら
日に順々 花が咲く
のを、息子みつけその蜜を吸っている

なにかと涙腺ゆるく
目の前の景色 水に埋もれながら
橋をわたり
畑をぬけて
家々のある坂下り
濃密な沈丁花の香り
ふんだんに吸い込みながら
そうして沈丁花に心からの礼を云い
(貴方の香りはもう、子どもの頃からずっと好きだ)

緑のトンネルぬけ
そろそろ終いの蕗の薹を
惜しみながら摘み
日々車で通る坂を
小鳥 追いかけながら上り、
車では入れない小道を抜け
ぐるうり長い散歩を終えて
我が家へ帰る

この長い道のりを
そのちいさき二本の足で
すたすたあるき
ここに居ることに
胸いっぱいにして
今日の日を眠る

つくしはお浸しに
セリもさっと茹で刻んでセリご飯に
蕗の薹とよもぎ、明日葉は天ぷらにして
お夕飯にいただいた

ああはるよ
おおはるよ
いとおしく
うるわしいはるの
おと、
かおり、
いろけしき

うつくしき
三歳の子と
ともに居る






















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