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  日々、ミカンのこと                 

nalu

海の家 

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七月のある日
生活の拠点を二階の部屋へ移した

とはいってもただ単に
我が家唯一のテーブルを二階へ運んだまでのこと
なのであるが、
それだけであらゆること
その営みの景色が変わってくる

二階の部屋からは
海が見える

ヨネさんちの
白銀色に照り光る屋根瓦越しに
まっすぐな今日の水平線がみえる

朝ごはんも昼ごはんも夕食もここで食べる
これまで台所内の
調理台から振り返ってそのままテーブルに
という便利さとは打って変わり
わざわざ二階へ食事をはこぶ
お盆一杯にのせても足らない時は
念じてみたとて
手がにょきにょき生えてきてはくれぬので
もう一度階段を下りて、上って
食事を運ぶ

むすこは当初
なんで二階でたべるが?
と、問うていたがじき慣れて
先発で二階へ上がり、
テーブルを拭き
箸と箸置きを並べてかえってくる
ので助かる

これまでこの家に住み暮らしていて何故
こうしなかったか
くらいこれがいい

この家に一目惚れしてここへ住まわせてもらっている
その醍醐味というものだ

しみじみ
ここで
茶を呑み
日記など書き
また
本や手紙など読み
深くこのさいわいを噛みしめる

ああ

つい数週間前までここでは
洗濯物を干し
朝の動作、祝詞をおこない
あとはお客さまが泊まるときにつかってもらうだけであった

おおそういえば
数ヶ月に一度、訪ねてくれる
月の海  canaちゃんに、ここ
海の見渡せる部屋で
髪を切っていただいている
今年の初めからのことだ
以来、髪はばっさりと短い
これも
私の本質に合っているような気がする

と、おもえば
テーブルの端にこどものカマキリが居る
揺れながら
あるいている
淡い黄緑色
お昼を知らせる
けたたましいサイレンの音がする

数日前よりむすこが
二階で寝たいと言い出した

どれどれと
布団を敷き
寝転んでみると
星がみえる

窓の外
暗闇に満天の星
ひかるがみえる

流れ星みえちゃうかもね
どうする?
なんて言いながらいつのまにか眠っている

朝が来て
太陽のひかり差し
波の音がする

カマキリはどこかへ居なくなった

そろそろ
お昼餉にするとする


いきていること
それは
くりかえす波のように

死者たちも同時にまた
うつくしく
いとおしく
ここに
ある




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