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  日々、ミカンのこと                 

nalu

なみのひ 

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七月三日
父と母の結婚記念日であった

物覚えのよろしくないわたしであるが
この日は何故か
ほぼ毎年、覚えている

数日前から
ああそろそろだなと
手帳やカレンダーをみておもう

なにかをプレゼントするわけでもない
ただその日に
おめでとう
ありがとう
とメッセージをふたりにおくる

そういえば

おもいだす

もう随分と前、
おそらく父と母が横浜へ住むようになって
まだ初々しいころであったか
たしか
わたしが娘を授かったばかりのころであったか

ある年の記念日
ふたりが都内のどこかでお祝いに食事をしようと
待ち合わせをしたことがあった
たしか自由が丘あたりであった

そのことにわたしは
そわそわ
うきうきとしていたので
健忘症のわりに
よく覚えている

仕事帰りの父は母に
花束を持って立っていたらしい
それが駅だったのか
店先であったのかは定かでない

定かではないが
母はそれを恥ずかしがり
やめてくれと云ったのだそうだ

なんとも母らしい

以来
記念日に食事はすれど
花束を用意することはなかったようす

わたしはこの話がすきで
父のことを
すてきだなとおもう

そういうところが
父にはあった

クリスマスには
母、私、真朱(むすめ)、妹へと
それぞれにカードを選んで前もって用意してある
そのクリスマスカードを選びに
都内の大きな文具店へ立ち寄る
父の姿を想像する

あれはなんのときであったのか
思いだせないけれど
たしか
父の退職の折
または
その年のクリスマスか誕生日

わたしと妹それぞれに
金貨のネックレスをくれた
金の価値はきっとずっと変わらないから

カエデの葉の刻印された金貨のついた
ネックレスであった

わたしは幼少のころ
金貨や小判が非常に好きで
憧れのまなざしで
それらを眺めた
友人の古い家や展示品として
額縁に並び、飾られるのを
うっとりと
なんなら
だれかあれをわたしにくれるところを
想像したりした

しかし
いよいよ本物の金貨を手にする
そのときのわたしは
ゴールドよりも真鍮を好むおんなに移行していたため
そのネックレスを常用することはない

父と食事をするときなどに
さりげなくそれを
身に着けている妹をみて
すてきだな
とその姿をみる

わたしはといえば
幼少のころからの
宝物を仕舞う引き出しの中に
それがある
この頃は
その引き出しをむすこが開けたがるので
荒らされたそのなかを
調えながら
その中身を確認する

黒くひかるすべすべした石
祖父母からの最期の手紙
飼っていた犬の毛
インコ、ひよこの羽根
天文学部の友人がくれた月の写真
密かにすきだった男の子がくれた天然石
そのなかに
父からもらったネックレスが
当時の小箱に入って在る

時折
うつくしいな

その思い出とともに
手に取って眺める
それいとおしむ

話が随分と反れてしまった

そう、なみのひだ

ナミの日
と名付けたのはむすめで
彼女もまた、わすれずにその日を覚えている

娘も祖父母にむけお祝いのメッセージを送った
という話をしながら
彼女が
なみのひ
と呼ぶのを知る

なみの日


は、わたしの名
nalu
のハワイ語の意である

わあ

ちいさく声を出す


今夜はふたりで外食をする

ふたりから返事が来る

カウンターに座って
食事するふたりはとても
佳い顔をしている
その写真をうけとり
嬉しく涙ぐむ

四十六回目の記念日
なのだそうだ
46年
その永き日々をともに生きている父と母に
心から
ありがとう と
おめでとう を
贈る


父は
年齢とともに
自分の記憶が薄らいでゆくのを危機としてなのか
この頃
非常にメモ魔である

小さなノートに
なにかにつけ
メモをとるのだそうだ

先日
実家を久しぶりに訪れた折
部屋の片隅に置かれた
何冊もの小さなノートをみた

まるでひそやかな
学者のようだ

わたしはそれを
いとおしく
すてきだなとおもっている




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